Nissy×SKY-HI「stormy」世界観考察

感動

前回、主題歌の3つの凄さについて解説しましたが、今回はスポーツ漫画の主題歌から作品の世界観をどのように表現しているのかを解説していきます。
※この記事はネタバレを含みます。ご注意ください。

映画「ブルーロック」とは

『ブルーロック』とは2018年より、金城宗幸(原作)とノ村優介(作画)が『週刊少年マガジン』で連載しているサッカーマンガです。集められた300人の高校生が生き残りをかけてサッカーをし、自分のエゴイズムによって進化する。これまでのようなサッカーマンガと違い、自らのエゴと周りのエゴが重なり、最強のチームとなっていく過程を描いたマンガです。
2024年4月19日より映画が公開され主題歌はNissy×SKY-HIが手がけています。

ブルーロック映画主題歌 「stormy」歌詞考察

まずは、ブルーロック主題歌「stormy」の歌詞についてですが、今回の映画の主人公であった凪 誠士郎(なぎ せいしろう)は人生全てがめんどくさいと感じ、誰とも関わることなく暮らしていました。そんな中、御影 玲王(みかげ れお)は凪の天性のサッカーセンスを見抜きサッカーを2人で始めることから物語が始まります。

冷めきった眼の中にエゴや理想を映した君と一緒に見ていたい…けど

これまで全てのことがめんどくさかった凪がサッカーを通して、自らのエゴに気づき、サッカーの楽しさを知り、強くなりたいと願う時、玲王は嬉しく思う。そんな、凪と一緒にこれからも戦いたいと思う優しい玲王の気持ちが表されている。

想像の範囲内で見れる夢地位、大金、名声それが何?うるせえ世界のてっぺんから見る風景 対価ならこの才能 I bet You bet

玲王はこれまで望んだもの全てを手に入れてきた存在であったが、それは親によって囲われた人生で退屈さを感じていた。そんな中、自らの心が踊り、手に入れたいと思えたものがサッカーで世界一になることであった。周りがなんと言おうと振り払って手に入れようとする玲王のエゴイズムが表されている。

ルールする世界 頭が高いぞ控えろ 手持ちの飛車、角、蹴散らすピエロ何掛けてもゼロはゼロ 諦めろ 手も足も出ないだろ 俺らのエゴ

ここではブルーロックの中において、凪と玲王が他を圧倒する強者であり
自分たちの可能性を1mmも疑うことのない玲王の気持ちが表されている。
控えろ、ピエロ、ゼロ、諦めろ、エゴと韻を重ねることで玲王の強さが他を攻め立てている描写も表現されている。

ご褒美はなんですか? 次の絶望者は誰ですか?Theory通りにはいかない この気持ちは僕のですか?

ここでは、試合を通して凪のサッカーへの気持ちの変化が表されている。
最初はケータイが取り戻せるからとサッカーをしていた凪が、どれだけ圧倒的な才能で相手をひれ伏せようとしても立ち上がり、予想を超える相手に対し、これまで持つことがなかった悔しさや勝利への執念、活躍への渇望、等様々な気持ちが出てきた様子が表されている。

LaLaLaLaLaLaLaLaLaLaLaLaLaLaLaLaLaLaLaLaLaLa OhYahYahYah

ここではLaを1人の選手として、サッカーの試合の規定人数11人が表されており、
またYahというシャウトはそれぞれの気持ちの高ぶりを感じさせる。

めんどくさい僕に触れてくれて目覚めたんだ〜僕ら迷路の中また巡り会う

凪が自らの新たな進化のために玲王の側を離れ行くが、玲王はそれを様々な感情(凪の才能への嫉妬や、共に歩めない悔しさ、それでも凪の才能を信じ進化を見れる喜び等)を持ちながら、快く送りだせずにでも、引き止めることはなかった姿を表している。
そして、またそれぞれが進化し高みでまた2人が出会う輝く未来が描かれる。

サビ

ブルーロックそのもののストーリーを表し、作中の世界観をそのまま描いている。

他主題歌との比較

人気映画「THE FIRST SLAM DUNK」と比較しながら解説していきたいと思います。

感動のポイント

どちらの主題歌も、作中のキャラクターの心情やこれまでの過去、これからの未来への変化等について描かれており主題歌だけでも感動があります。しかし、作品を見てから改めて主題歌を聞いた時、映画を見ていた時の映像、心情、感動、興奮が蘇ります。
歌詞には作品が丸々埋め込まれており、映画を観た人がここでもう一度感動することができます。

歌の挿入のタイミング

これには、違いがありました。
「stormy」はエンドロールとともに流れ、第ゼロ感」はクライマックスのシーンとともに流れました。エンドロールとともに流れることによって、エンドロールの時間に、これまでの映画の内容を主題歌を聞きながら、思い出し余韻に浸ることができます。
クライマックスで流れることによって、映像×音楽により心の動きが更に加速します。
どちらも感動を起こすきっかけですが、「ブルーロック」はこれからまだ続いていく、「スラムダンク」はここが最後のエピソードであるという違いから、挿入のタイミングを計算しているのかもしれません。

MVに現れるアーティストのその曲の表現の違い

MV(ミュージックビデオ)でも違いがありました。
「stormy」では主題歌を歌うNissyが凪を、SKY-HIが玲王を自らが表現しています。
舞台は監獄(=ブルーロックを表す)
で、監獄内の受刑者の列には主題歌を歌うNissyとSKY-HIの姿と、被り物を被った人、年齢も若い人から少し歳を召した人まで様々な個性が集まっています。
Nissyはスーツ姿(スーツ姿は凪たちの学生服を表している)で取調室のような場所で、SKY-HIはカジュアルな姿で、モニターに囲まれた司令室のような場所(絵心 甚八がいるモニター室)でそれぞれAメロを歌う。サビもお互いの場所は基本的に変わらずだが、少しずつ場所が重なり合いながら歌う。

2番に入り、SKY-HIのラップが始まる。番犬を引きながら、受刑者たちの横を歩く。
(=玲王が凪を引きつれてサッカーをするBOSSとそれに従う犬のような関係性を表す)

2番に入り、Nissyは衣装は白に変わり、電源コードのようなものでがんじがらめにされ、座っているシーンへと変わる。(=凪は様々な感情に縛られているが、理解できずにいる様子を表す)

そして、3番では、NissyとSKY-HIが受刑者がつくる円の中で向かい合い歌うシーンへと変わる。掛け合いで歌いながら盛り上がって行く。そして、ラストサビではコードで縛られたNissyはその拘束を打ち破り自らを解放する(=凪が自らのエゴに気づき、己の道を進み始める様子を表している)

続いて、「第ゼロ感」は赤の帽子を被り湘北を、緑のジャケットで山王を表しています。
舞台はコンクリートの床のバスケットゴールが置かれた場所。
また、バンドの演奏の際の舞台は、円状のライトに、均等に配置された別のライト。
(=バスケットゴールの網をイメージして作られているようにみえる。)


バスケットボールを行う2つのグループが存在し、
1つは赤を基調とする衣装を纏うグループ。もう1つは、緑を基調とする衣装で湘北と山王を想起させる。ゴールシーンとして描かれているのは、ダンクシュートの場面やドリブルで相手を抜く場面で、映画の名シーンを蘇らせるようなものになっています。

このように、自らがその映画の主人公となってクリエイトする形と、あくまでバンドという形を崩さ無いまま、並行してクリエイトする形とに分かれています。

まとめ

いかがだったでしょうか。
映画を観る前から、主題歌のMVを見て世界観を想像し、歌詞から作品を想像しながら映画を観て、
映画を観たからこそわかる歌詞の意味があり、非常に感動しました。

主題歌には、作品そのものが詰め込まれており、映画の作者と主題歌の作者の芸術が組み合わさってできています。そこに意識をおいて聞いてみると、アーティストの方への尊敬が止まりません。
自分だったら、あの映画を観て、主題歌のような歌詞に辿り着くのか、自らの感性も磨いていきたいと思います。

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